杉舌下免疫治療で体内に起こる変化について
スギ花粉症は日本で4000万人が罹患しており、今や国民病と言われます。以前は考えられなかったことですが、最近では3歳前後でスギ花粉症を発症する子供がとても多くなっています。 2018年6月からシダキュアという薬剤を使用した舌下免疫治療が始まりました。この治療はスギ花粉症を根本的な治癒へ導く治療法です。そのせいか、最近舌下免疫治療を受ける患者さんがとても多くなりました。舌下免疫治療の有効率は6割-7割とされています。当院小児科で舌下免疫治療を受けている患者さんの効果を検証してみると、スギ花粉が大量に飛散している時期でも「全く薬を飲まなくても症状がない」「抗アレルギー薬の内服だけで、症状をコントロール出来るようになった」など、明らかに効果が確認できる症例が8割以上を占めています。小児は成人と比較して舌下免疫治療の効果が高い印象です。
しかし、とても効果のある患者さんのIgE RAST検査結果を治療前後で比較して見ても、改善は全く認められません。では体内でどのような反応が起きているのでしょうか。調べてみましたので説明します。
シダキュア治療が効き始めると、体内のIgEの性質が大きく変化します。
治療以前ならばスギ花粉が体内に入ってくると、IgEが強力に、一瞬でスギ花粉に結合して、
アレルギー反応が大爆発していました。しかし舌下免疫治療を続けるとIgEの形状
が変化し「スギ花粉と結合してもユルユルの状態になり、すぐにはずれてしまう」
状況になります。IgEの質が変化してくるのです。これは治療開始後1年ほどで見られ
る反応です。その後2年、3年と年数を重ねるにつれて、この免疫の質の変化がより
強固に、効果が安定していきます。 滋賀大学医学部からallergyという雑誌に発表
されました。これを医学的には「IgEの親和性が弱まる」と言います。
2.IgG4抗体(ブロッキング抗体)が作られてくる
IgG4抗体は、アレルギー反応を起こすIgEが杉花粉と結合するのを先回りして
ブロックする抗体として働きます。ブロック役の善玉抗体です。その結果スギ花粉が
体内に入ってもアレルギーのスイッチが入りづらくなります。IgG4抗体は治療開始後
3ヶ月から6ヶ月という非常に早い時期から血中に急激に増加してくることがわかり
ました。毎日治療を続けることで、IgG4抗体が常にスタンバイした状態になります
日鼻誌63(1):208-209,2026
3.制御性T細胞の出現(Treg)
本来スギ花粉は我々の体には害のない安全なものです。スギ花粉症患者では、危険な侵入者だと勘違いして
免疫細胞が大騒ぎしてIgE抗体を大量に作り、強いアレルギー症状を引き起こします。シダキュア治療を毎日続けていると、
「スギ花粉は実は攻撃しなくてもいい安全なもの?」と気づき始めます。このときに作られるのが制御性T細胞Tregです。
免疫の暴走を止めるブレーキ役と考えてください。これによって、攻撃ストップの命令が出て、IgE抗体が減少する、
IgG4抗体を作って症状を和らげてくれる、こんな流れが体内でできあがります。制御性T細胞の誘導が始まり、
体感として効果が実感されるのは治療開始後数ヶ月から1年前後と言われます。日鼻誌63(1):208-209,2026

以上、IgE RAST抗体価に改善が認められなくても上記の変化が起きていることがわかってきました。
抗体価が改善していなくても、諦めずに治療を継続することが大切です。体内で起きている頼もしい反応を
しっかりと定着させるためには3-5年という長い期間が必要で、毎日治療を継続することが不可欠です。
治療を継続させることで、治療中止後の再燃率が低くなることも判明しています。
毎年春になるとやってくるスギ花粉症ですが、今までは薬で症状を和らげる以外に術はありませんでした。
しかしシダキュア治療は、花粉症の症状が出ない体質へ変化させる根本的な治療法です。最も大切なことは
毎日薬を飲み続けることです。どうか頑張って継続してください。