RSウイルスは、2歳までにほとんどの子どもがかかる、代表的な風邪のウイルスです。
乳幼児期の気管支炎や肺炎などの下気道感染症の原因としてとても重要なウイルスで、実に乳幼児の肺炎の50%、急性細気管支炎の50~90%がRSウイルスであるとされる程です。特に生後数週から数か月の期間は、低出生体重児や心肺系に基礎疾患がある子ども、免疫不全のある子どもでは重症化するリスクが高まります。例年秋から冬に流行し初春まで続くとされてきましたが、近年では7月以降から流行する傾向にあります。
軽い風邪で終わることも多いですが、初感染では1/3が気管支炎などの下気道感染症を併発するとされています。一度罹患しても麻疹や水痘のように終生免疫とならず、何度でも感染を繰り返すのが特徴です。2回目、3回目の感染でも気管支炎を起こすこともありますが、感染を繰り返す毎に症状は軽くなり、普通の風邪で終わるようになっていきます。
→ 発熱、鼻水などの風邪症状が出現し、多くは数日で軽快します。
→ 下気道炎を併発する場合は、風邪症状から数日後に39度前後の発熱と急激に咳が増悪していきます。特に注意をしなくてはならない症状が、息を吐くときにゼーゼー、ヒューヒューする呼気性喘鳴です。これは気管支の中でも細気管支(細い気管支)が細くなってしまい、空気の通りが悪くなることで聞こえる音です。呼吸が早くなり、苦しそうな呼吸になってくることもあります。安静時1分間の呼吸数が生後2か月以内で60回、2か月から1歳で50回、1~5歳で40回を超える時には、細気管支炎などの下気道感染の可能性が高くなっていますのでご注意ください。
→ 熱は初感染の場合、インフルエンザのような高熱が3~4日位続くこともあります。それ以上続く場合は、2次感染の併発により抗菌薬の内服が必要となることもありますので注意が必要です。
→ 中耳炎を併発しやすいのがRS感染症の特徴で、初感染では30~50%に中耳炎を合併するという報告もあります。乳幼児は耳の痛みを上手く訴えることができないため、早期に中耳炎を見つけるのは難しいですが、機嫌が悪くなる、耳に手をやる、耳漏などの症状に気を付けてください。
→ RS感染後、風邪をひくたびに喘鳴を繰り返すことがあり、特に重症なRS感染症の後で起きやすくなります。このような場合には喘息を起こす確率が高くなります。
→ 低出生体重児や心臓や肺に基礎疾患のある子ども、生後3か月未満の乳児では、重症化しやすいのでご注意ください。ぐったりしてミルクの飲みが極端に悪くなる、チアノーゼ、呼吸の際に胸とお腹がペコペコと陥没する「陥没呼吸」などが見られたら、すぐに受診してください。風邪症状を認めずに無呼吸発作を起こして突然死したり、急性脳症を起こす場合もあります。
→ 感染経路は飛沫感染と接触感染です。子ども同士での咳やくしゃみを介して感染しますので、しっかりと手洗い・うがいをすることが重要です。マスクの着用も有効です。